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いま、勤務中に大きな地震が起きたとします。
あなたは、最初の30秒で何をしますか。
この問いに即答できる方は、多くありません。研修で聞いたことはあっても、体が動く形にはなっていないからです。
この記事では、病棟での初動と、自分と家族の備えの両方を書きます。
先にお伝えします。実際の対応は、必ず自施設のマニュアルに従ってください。 ここに書くのは、考え方の枠組みです。
最初の30秒:自分の身を守る
意外に思われるかもしれませんが、最初にやることは患者さんの保護ではありません。
自分が無事でなければ、誰も助けられません。
落下物から頭を守り、揺れが収まるのを待つ。この数十秒を飛ばして動き出すと、負傷者が1人増えるだけです。
医療者は、とっさに患者さんへ向かおうとします。その反射を、いったん止める訓練が要ります。
揺れが収まったら
優先順位は決まっています。
- 自分と同僚の安全確認
- 火災の有無(火が出ていれば、これが最優先になります)
- 患者さんの安否確認(人数を数えることから)
- 医療機器の状態(人工呼吸器、酸素、輸液ポンプ)
- 被害の状況を、決められた場所へ報告
3番目は「人数」からです。 1人ずつ状態を見るより先に、全員いるかを確認します。
そして4番目で、いちばん急ぐのは人工呼吸器です。 停電すれば内部バッテリーで動きますが、時間には限りがあります。バッグバルブマスクの位置を、いま確認しておいてください。
停電したときに、何が止まるか
ここを整理しておくと、動きが早くなります。
病院には非常用電源があり、コンセントの色で区別されています。ただし、すべてのコンセントが非常用ではありません。
いま自分の病棟で、どのコンセントが非常用か、言えますか。
人工呼吸器、輸液ポンプ、シリンジポンプ、吸引。これらが非常用電源につながっているかを、確認しておいてください。
そして、非常用電源にも限界があります。燃料が尽きれば止まります。 長時間の停電では、手動での対応が必要になります。
トリアージという考え方
多数の傷病者が出たとき、考え方が平時と逆になります。
平時は、最も重い人に最も多くの資源を使います。
災害時は、最も多くの人を助けられるように資源を配分します。
だから、救命の可能性が極めて低い方への処置を、いったん保留するという判断が生まれます。
これは、医療者にとって最もつらい部分です。訓練で頭では分かっていても、実際にやるのは別のことです。
だからこそ、個人で判断するものではありません。 現場の指揮系統のもとで行われます。1人で背負う場面ではない、と知っておいてください。
具体的な手順と分類の基準は、施設と地域で定められています。自施設の訓練で確認してください。
災害時に増える健康問題
看護師が関わるのは、急性期の外傷だけではありません。むしろ、時間が経ってからのほうが長く関わります。
- 持病の薬が切れる(高血圧、糖尿病、精神疾患、抗てんかん薬)
- 脱水(トイレを我慢して水を飲まなくなります)
- 静脈血栓塞栓症(車中泊、長時間の同じ姿勢)
- 感染症(避難所での集団生活)
- 不眠と、それに続く心身の不調
- 低体温、または熱中症
1番目が、最も多く、最も防ぎやすい問題です。
患者さんに「お薬手帳を持ち歩いてください」と伝える意味が、ここにあります。薬の名前が分かれば、避難先でも処方できます。
3番目も見落とされます。 車中泊が続く状況では、意識して足を動かし、水分を取るよう伝えてください。
自分と家族の備え
ここが、この記事でいちばん伝えたいことです。
看護師は、災害時に呼び出される側です。 だからこそ、家のことを先に決めておく必要があります。
家族と決めておくこと
- 連絡が取れないときの集合場所
- 子どもの引き取りを誰がするか(自分は動けない前提で)
- ペットをどうするか
- 高齢の家族の避難を誰が手伝うか
2番目を決めていない方が多いです。 「自分が迎えに行く」を前提にすると、成り立ちません。あなたは職場にいます。
職場に置いておくもの
- 履き慣れた運動靴(サンダルでは動けません)
- 常備薬(数日分)
- 眼鏡の予備(コンタクトの方は特に)
- 現金(停電するとカードも電子決済も使えません)
- モバイルバッテリー
- 簡易的な食料
1番目が実務的に効きます。 災害時、そのまま何日も帰れないことがあります。
参集のルールを確認しておく
多くの施設に、災害時の参集基準があります。震度いくつで、誰が、どこへ来るのか。
いま、それを言えますか。
言えないなら、次の勤務で確認してください。災害時に調べる時間はありません。
今日できる3つのこと
大がかりな準備は要りません。これだけです。
- 自分の病棟で、非常用電源のコンセントがどれかを確認する
- 災害時の参集基準を確認する
- 家族と、連絡が取れないときの取り決めをする
3番目は、今日の帰りに話せます。 5分で終わります。
災害のあとに来るもの
最後に、これを書いておきます。
災害対応にあたった医療者は、あとから心身の不調が出ることがあります。
助けられなかった人の記憶、判断への後悔、家族を放って働いた罪悪感。これらは、その場では感じません。落ち着いてから来ます。
眠れない、その場面が繰り返し浮かぶ、気持ちが晴れない。そうなったら、それは弱さではありません。
詳しくは看護師のメンタル不調|見逃されやすいサインを読んでください。相談してよい状態です。
まとめ
最初の30秒は、自分の身を守ってください。 あなたが無事でなければ、誰も助けられません。
揺れが収まったら、自分と同僚、火災の有無、患者さんの人数、医療機器の順です。人工呼吸器のバッテリーには限りがあります。
災害時に最も多い健康問題は、持病の薬が切れることです。お薬手帳を勧める意味がここにあります。
そして、看護師は呼び出される側です。 家族との取り決めを、先にしておいてください。
今日できるのは3つ。非常用電源の確認、参集基準の確認、家族との取り決め。 最後の1つは、今日の帰りに話せます。


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