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医療者は、自分の不調をいちばん後回しにします。
患者さんに同じ症状を聞いたら受診を勧めるのに、自分のことになると「まだ大丈夫」と考える。これは看護師に限らず、医療に関わる人にとても多い傾向です。
この記事は、あなたの状態を診断するものではありません。「これは相談していい状態だ」と判断するための材料をお渡しするものです。
先にお伝えします。いま「消えてしまいたい」という気持ちがあるなら、この記事を読み進めるより先に、誰かに連絡してください。 相談先は下のほうにまとめています。
不調は、気持ちより先に体に出ます
ここを知っておいてください。
多くの方は「気持ちが落ち込んだら不調」と考えています。ですが実際には、体のほうが先に変わることがよくあります。
気づきやすいのは、次のような変化です。
- 寝つけない、途中で目が覚める、朝早くに目が覚めてしまう
- 眠っているのに疲れが取れない
- 食欲がない、または食べ過ぎてしまう
- 体重が短期間で変わった
- 頭痛、腹痛、めまいが続く
- 動悸がする
夜勤があると、これらを「シフトのせい」と説明できてしまいます。 そこが、看護師にとって見逃しやすい理由です。
夜勤による体の変化については夜勤は体に何をしているのかで扱っています。そちらの対策を試しても戻らないなら、原因が別にある可能性があります。
仕事のなかで出るサイン
周囲が先に気づくこともあります。
- いつもならしないミスが増えた
- 確認に前より時間がかかる
- 人と話すのがおっくうになった
- 患者さんに気持ちが向かなくなった
- 出勤前に動悸がする、涙が出る
- 休みの日も仕事のことが頭から離れない
4番目を、責めないでください。
患者さんへの関心が薄れていくのは、看護師としての資質の問題ではありません。消耗が続いたときに起きる、よく知られた変化です。 心を守るために、感じる力のほうが下がっているのです。
この状態を自覚したときに、「自分は看護師に向いていない」と結論を出してしまう方がいます。順番が逆です。 向いていないのではなく、消耗しています。
相談を先延ばししないでほしい状態
次のどれかが当てはまるなら、様子を見ないでください。
- 2週間以上、気分の落ち込みが続いている
- 眠れない状態が続いている
- 食べられない、体重が落ちた
- 朝、体が動かなくて出勤できない日がある
- お酒の量が増えた
- 「消えてしまいたい」「いなくなりたい」と思うことがある
最後の項目は、今日中に誰かに話してください。 家族でも、同僚でも、下に挙げる窓口でも構いません。
この気持ちは、意志の弱さでも性格でもありません。疲れ切った脳が出す症状として現れることがあります。 状態が回復すれば、その考えも薄れていきます。
相談できる場所
「どこに行けばいいか分からない」で止まる方が多いので、整理します。
職場のなかで
- 産業医(一定規模の職場には選任されています。人事評価には結びつきません)
- 職場の健康相談窓口
- 信頼できる先輩、看護部長
産業医は、いちばん近いのに使われていない資源です。 「そんな大げさなことでは」と遠慮する方が多いのですが、こういう相談のためにいます。
職場の外で
- 精神科・心療内科(受診に紹介状は要りません)
- かかりつけの内科(まずここでも構いません)
- こころの健康相談統一ダイヤル(厚生労働省。都道府県の相談窓口につながります)
- いのちの電話
- 都道府県の精神保健福祉センター
- 看護協会の相談窓口
電話番号は変わることがあるので、この記事には書いていません。 厚生労働省のサイトに相談窓口の一覧があります。「厚生労働省 こころの相談」で確認してください。
受診をためらう理由に、先に答えます
「同業だから、知られたくない」
職場から離れた医療機関を選んで構いません。それは逃げではなく、当然の配慮です。
医療者が医療者として受診しにくいのは、よく知られた問題です。気にせず受診してください、と言われても難しいことは分かっています。 だから場所を選んでください。
「薬を飲みたくない」
受診したら必ず薬になる、というものではありません。
まず話を聞いて、状態を確認して、休養や環境の調整で対応することもあります。受診と服薬は同じ意味ではありません。
「そこまでではない気がする」
これがいちばん多い理由です。
ですが、「そこまでではない」段階で相談するほうが、回復は早くなります。 限界まで我慢してからだと、休む期間も長くなります。
受診して「大丈夫でしたね」と言われるなら、それが最良の結果です。
休職という選択について
休むことに強い抵抗を感じる方が多いので、書いておきます。
休職は、逃げでも脱落でもありません。 消耗した状態で働き続けると、回復に必要な期間はどんどん長くなります。
そして、これは患者さんの安全にも関わります。判断力が落ちている状態で医療行為を続けるのは、あなたにとってもリスクです。
傷病手当金という制度があり、条件を満たせば収入の一部が支給されます。休むと収入がゼロになる、というわけではありません。 加入している健康保険の窓口で確認してください。
環境そのものが原因のこともあります
ここははっきり書きます。
不調の原因が、その職場の側にあることがあります。慢性的な人手不足、暴言、報告できない空気、責任だけが重い配置。それは個人の耐性の問題ではありません。
ハラスメントを受けている場合は、記録を残してください。日付、相手、内容。「言った」「言わない」になったときに、記録だけが残ります。
相談先としては、都道府県労働局の総合労働相談コーナーがあります。無料です。
そして、環境が原因なら、環境を変えることが治療になります。
夜勤のない職場、少人数で回さない職場、体力的な負担が軽い職場。病院以外で働く看護師の職場9つに、選択肢と収入の現実をまとめています。
回復してきたときに気をつけること
少し良くなると、すぐ元のペースに戻そうとする方が多いです。
ここで戻しすぎると、繰り返します。
復帰するときは、時短、夜勤なしから始める、部署を変えるといった調整を、遠慮せず相談してください。完全に元通りにする必要はありません。
最後に
看護師は、人の不調に気づく訓練を受けています。その目を、一度だけ自分に向けてください。
眠れているか。食べられているか。休みの日に気持ちが晴れるか。
同じ状態の同僚がいたら、あなたは何と声をかけますか。その言葉を、自分にかけてください。
相談することは、弱さではありません。あなたが倒れると、困る人がいます。


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