認知症看護で最初に見るもの|医師が説明する、せん妄との違い

認知症看護で最初に見るもの 未分類

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「昨日まで穏やかだった患者さんが、夜になって別人のようになった」

こういうとき、記録に「認知症の悪化」と書かれることがあります。その多くは、認知症の悪化ではありません。

この記事では、認知症とせん妄の見分け方から書きます。ここを分けられるかどうかで、患者さんの経過が変わります。

先にお伝えします。これは一般的な情報であり、個別の判断を指示するものではありません。 実際の対応は、担当医と自施設の方針に従ってください。

せん妄は、治せます

ここが、この記事でいちばん伝えたいことです。

認知症は、ゆっくり進む慢性の状態です。 対してせん妄は、急に起きて、原因を取り除けば戻る状態です。

つまり、せん妄を「認知症だから仕方ない」と扱うと、治せるものを治さないことになります。

そして、せん妄に最初に気づくのは、たいてい看護師です。医師は24時間そばにいません。

見分けるポイント

完全な区別は診断が必要ですが、気づくための手がかりははっきりしています。

1. 始まり方

  • 認知症:数か月から数年かけて、少しずつ
  • せん妄:数時間から数日で、急に

「昨日までできていたことが、今日できない」なら、せん妄を疑ってください。

2. 変動するかどうか

  • 認知症:日中を通して、状態はおおむね一定
  • せん妄:1日のなかで良くなったり悪くなったりする

朝は普通に話せたのに、夕方から混乱する。この変動が、いちばん分かりやすい手がかりです。

3. 注意が保てるか

  • 認知症:話の内容は忘れても、会話そのものは続く
  • せん妄:注意がそれて、会話が続かない

視線が合わない、質問の途中で別のことを言い出す。ここは記録に残す価値があります。

4. 意識のはっきりさ

せん妄では、ぼんやりしている時間帯があります。 認知症だけなら、意識そのものは清明です。

せん妄の原因は、たいてい体にあります

ここを押さえておくと、報告の質が変わります。

よくある原因を挙げます。

  • 感染(尿路感染、肺炎。高齢者では発熱がはっきりしないことがあります)
  • 脱水
  • 薬剤(睡眠薬、鎮痛薬、抗コリン作用のある薬)
  • 電解質の異常
  • 低酸素
  • 痛み(訴えられないぶん、行動に出ます)
  • 便秘、尿閉
  • 環境の変化(入院そのものが引き金になります)

最後から2番目を見落とさないでください。 便秘と尿閉は、確認すれば分かり、対応すれば改善します。いちばん見つけやすく、いちばん見落とされます。

そして3番目です。 「眠れないから」と睡眠薬を足した翌日から混乱が始まる。この順番は、実際によくあります。

報告するときの形

「不穏です」だけでは、医師は動けません。

次を添えてください。

  1. いつから変わったか(何日前か、何時ごろか)
  2. 変動があるか(時間帯で違うか)
  3. バイタル、酸素飽和度
  4. 最終排便、尿量
  5. 直近で追加・変更された薬
  6. 食事と水分の摂取量

1番目と5番目が、いちばん効きます。 この2つがあると、原因の当たりがつきます。

対応の原則

薬に頼る前にできることが、いくつもあります。

否定しない

「そんな人はいませんよ」と訂正しても、混乱が増すだけです。

訴えの内容ではなく、その裏にある気持ちに応えてください。 「家に帰りたい」の裏にあるのは、たいてい不安です。

環境を整える

  • 眼鏡と補聴器を使ってもらう(見えない、聞こえないは混乱を悪化させます)
  • 日中は明るく、夜は暗く
  • 時計とカレンダーを見える位置に
  • 使い慣れた物を身近に置く
  • 点滴やドレーンを、視界から外す

1番目が、驚くほど効きます。 入院時に外したまま、というケースが本当に多いです。

体のリズムを保つ

日中に起きて、夜に眠る。この当たり前のことが、せん妄の予防でいちばん強い手段です。

日中に離床できるか、光を浴びられるか。ここを守れる病棟は、せん妄が減ります。

身体拘束について

ここは、はっきり書きます。

身体拘束は、最後の手段です。 そして、拘束そのものがせん妄を悪化させます。

動けない、状況が分からない、体を押さえられている。これは、混乱を強める条件が揃った状態です。

拘束を検討する前に、次を確認してください。

  • その点滴やドレーンは、いま本当に必要か
  • 抜けたら何が起きるのか(命に関わるのか、刺し直せば済むのか)
  • 原因になりうる薬を、減らせないか
  • 痛み、便秘、尿閉を確認したか

1番目が、いちばん本質的です。 「抜かれると困るから拘束する」より、「抜かれても困らない状態にできないか」を先に考える。これは医師と相談すべきことです。

実施する場合は、要件と手続きが定められています。必ず自施設の規定に従ってください。

家族への対応

家族は、変わってしまった姿にいちばん動揺しています。

「入院すると、こうなることがあります」と、先に伝えておくことに意味があります。

そして、せん妄なら「戻る可能性があります」と伝えてください。 これを知らないまま「認知症が進んだ」と受け取ると、家族の判断が変わってしまいます。

ただし、断定はしないでください。 見通しの説明は医師の役割です。看護師が伝えるのは、「そういう状態がありうる」というところまでです。

自分の消耗について

最後に書いておきます。

認知症やせん妄のある患者さんへの対応は、精神的な消耗が大きいです。

同じ話を何度も聞き、否定せずに応え、暴言を受けても対応する。これを何時間も続けるのは、技術の問題ではなく消耗の問題です。

1人で抱えないでください。チームで交代する、記録で共有する、しんどさを口に出す。 それが続けるための条件です。

詳しくは看護師のメンタル不調|見逃されやすいサインを読んでください。

まとめ

急に始まって、1日のなかで変動するなら、せん妄を疑ってください。 せん妄は原因を取り除けば戻ります。

原因はたいてい体にあります。感染、脱水、薬、痛み、便秘、尿閉。 便秘と尿閉は、いちばん見つけやすく、いちばん見落とされます。

報告するときは、いつから変わったかと、直近で変更された薬を必ず添えてください。

対応は、否定しない、眼鏡と補聴器を使ってもらう、日中に起こす。拘束は最後の手段で、それ自体が悪化させます。

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