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「これはハラスメントなのか、それとも指導なのか」
この判断がつかないまま耐えている方が、非常に多いです。判断がつかないから相談もできず、時間だけが過ぎていきます。
この記事では、線引きの考え方と、実際に事態を動かすための手順をお伝えします。
先にお伝えします。「気にしないようにしましょう」という記事ではありません。 記録を取り、相談先へつなぐところまでを書きます。
指導とハラスメントの線引き
完全な線を引くことはできませんが、判断の材料はあります。
指導は、行為に向きます。ハラスメントは、人格に向きます。
- 「この手順が抜けていた。次はここを確認して」→ 行為への指摘
- 「そんなことも分からないの」「向いてない」→ 人格への攻撃
もう1つの材料は、再現性があるかどうかです。改善の方法が示されないまま同じ言葉が繰り返されるなら、指導として機能していません。
そして、人前で長時間叱責する、無視する、明らかに終わらない量を押しつける。これらは業務上必要な範囲を超えていると判断されうる行為です。
看護の現場で起きやすい形
職種の構造から、起きやすいパターンがあります。
1. 先輩から後輩へ
指導という名前がついているぶん、もっとも判断が難しい形です。
教えない、質問に答えない、ため息をつく、聞こえるように悪口を言う。直接的な言葉がなくても、成立します。
2. 医師から看護師へ
職種をまたぐと、報告経路が複雑になります。看護部に相談しても「医局のことだから」で止まってしまう。
ここは、看護部長より上に上げる必要がある場合があります。 病院には全体としての防止措置の義務があるので、看護部内で完結する問題ではありません。
3. 患者さん・ご家族から
暴言、身体的な暴力、性的な言動。「患者さんだから仕方ない」と扱われがちですが、それは違います。
顧客や取引先からの著しい迷惑行為についても、事業主が相談に応じ、適切に対応することが求められています。 我慢の対象ではありません。
4. 妊娠・育児に関するもの
夜勤免除を申し出たら態度が変わった。時短を使うことで嫌味を言われる。
妊娠、出産、育休の取得を理由とする不利益な取り扱いは、法律で禁止されています。
制度の中身は看護師の産休・育休と復職で扱っています。
いちばん大事なのは、記録です
ここが、この記事の核心です。
相談しても動かない理由の多くは、「言った」「言わない」になるからです。記録があるかどうかで、結果がまったく変わります。
何を残すか
- 日付と時刻
- 場所
- 相手の氏名
- 言われた言葉を、そのまま(要約しない)
- その場にいた人
- そのとき自分がどう感じたか
- 体調への影響(眠れなくなった、食事が喉を通らない)
4番目が重要です。 「ひどいことを言われた」ではなく、実際の言葉をそのまま書いてください。要約すると、証拠としての力が落ちます。
どう残すか
- スマートフォンのメモ(日時が自動で残ります)
- 自分宛てのメールを送る(送信日時が記録されます)
- 手帳に手書き
- 体調の変化は、受診したときのカルテにも残ります
その日のうちに書いてください。 記憶は驚くほど早く曖昧になります。
録音については、職場のルールと状況によります。まずは書面での記録を確実にしてください。
相談できる場所
順番に整理します。
職場のなかで
- ハラスメントの相談窓口(事業主は相談体制の整備を求められています。あるはずです)
- 直属ではない上司、看護部長
- 産業医(体調に影響が出ている場合)
「窓口があるかどうか分からない」なら、それ自体を確認してください。 就業規則か、職場の掲示に書かれています。
職場の外で
- 都道府県労働局の総合労働相談コーナー(無料。予約なしで相談できます)
- 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)(妊娠・出産に関わるものはこちら)
- 法テラス(条件を満たせば、弁護士への相談が無料になる制度があります)
- 看護協会の相談窓口
- 労働組合(職場にある場合)
相談は無料で、記録が残ります。 「まだそこまでではない」と感じても、事実を伝えておくだけで意味があります。
相談しても動かないとき
正直に書きます。相談しても変わらないことはあります。
特に、加害者が職場で力を持っている場合や、組織全体がその状態を当たり前としている場合です。
そのときに考えてほしいことがあります。
あなたが変えられるのは、自分の環境だけです。 組織を変えることは、1人では難しい。それは諦めではなく、事実です。
そして、逃げることは負けではありません。 消耗しきってから動くほうが、はるかに不利になります。
体に出ているなら、そちらが先です
次のような状態が続いているなら、ハラスメントの解決より先に確認してください。
- 眠れない、食べられない
- 出勤前に動悸がする、涙が出る
- 休みの日も気持ちが晴れない
これは根性の問題ではありません。 詳しくは看護師のメンタル不調|見逃されやすいサインを読んでください。
受診した記録は、ハラスメントの影響を示す材料にもなります。
辞めると決めたときも、記録は持っていく
職場を離れることにした場合でも、記録は残しておいてください。
労災の申請、失業給付の扱い、あとから相談する可能性。手元に何もないと、どれも難しくなります。
退職の進め方は看護師の退職の切り出し方にまとめています。
次の職場を選ぶときは、離職率と平均勤続年数を必ず確認してください。 同じことを繰り返さないための、数少ない手がかりです。
確認の仕方は看護師の転職で後悔する5つのパターンで扱っています。
まとめ
指導は行為に向き、ハラスメントは人格に向きます。改善の方法が示されないまま繰り返されるなら、それは指導として機能していません。
そして、いちばん大事なのは記録です。日付、場所、相手、言われた言葉をそのまま。 その日のうちに書いてください。
相談先は、職場の窓口と、都道府県労働局です。どちらも無料で、記録が残ります。
患者さんからの暴言や暴力も、我慢の対象ではありません。事業主が対応すべきこととして扱われています。
そして、それでも変わらないなら、環境を変えてください。逃げることは負けではありません。


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