夜勤帯。なんとなく様子がおかしい。でも、バイタルは大きく崩れていない。
「こんなことで呼んでいいのか」
その迷いで立ち止まった経験は、ほとんどの看護師にあると思います。
この記事は、呼ばれる側から書きます。当直医が何を考えているか、どう伝えると早く動けるか。呼ぶ側からは見えない部分です。
なお、院内の取り決めは施設ごとに違います。実際の対応は勤務先の基準に従ってください。
先に結論を書きます
呼んでください。
そして、これは気休めではありません。呼ばれて何もなかったときのコストと、呼ばずに手遅れになったときのコストが、まったく釣り合っていないからです。
前者は、医師が数分歩いて、確認して、戻るだけです。後者は取り返しがつきません。
その非対称性を、呼ぶ側が一人で背負う必要はありません。
当直医が内心どう思っているか
正直に書きます。呼ばれた瞬間は、誰でも一瞬身構えます。 眠い時間帯ならなおさらです。
ただ、それは「呼ばないでほしい」とは別のことです。
当直をしていて本当に困るのは、呼ばれることではありません。手遅れになってから呼ばれることです。
「さっきから変だったんですけど」と後から聞かされるほうが、はるかに困ります。その時点で選べる手が減っているからです。
不機嫌そうに見えたとしても、それは呼んだことへの反応ではなく、状況への反応だと思ってください。
「何か変」は、根拠として十分です
数値が揃っていないと呼べない、と思っている方が多いようです。そんなことはありません。
長く患者さんを見ている看護師の「いつもと違う」は、数値が動く前の変化を捉えていることがあります。 顔色、話し方、反応の鈍さ、落ち着かなさ。カルテに書きにくいものほど、早期の情報だったりします。
だから、こう言ってもらって構いません。
「うまく言えないんですが、いつもと違う感じがします」
これは立派な報告です。言語化できていないことを、呼ばない理由にしないでください。
こう伝えると、医師は早く動けます
呼ぶと決めたあと、伝え方で対応速度が変わります。順番はこれだけ意識してください。
- 誰が(患者名と部屋番号)
- 何が起きているか(一言で。「呼吸が荒いです」「意識がはっきりしません」)
- バイタル(測れているものだけで構いません)
- いつからか(さっき、1時間前、夕方から)
- あなたが何を心配しているか
5番がいちばん大事です。 「誤嚥したかもしれません」「出血しているかもしれません」と言ってもらえると、こちらの頭が一気に絞れます。
逆に、数値だけを正確に読み上げられると、かえって時間がかかります。 何を心配しているのかが分からないと、こちらは一から可能性を洗い直すことになります。
遠慮して核心をぼかさないでください。 心配していることを、そのまま言ってください。
測れていなくても呼んでいい場面
先に測ろうとして時間を使わないでほしい場面があります。
- 意識がおかしい(呼びかけへの反応が鈍い、話がかみ合わない)
- 呼吸の様子が明らかに変(数だけでなく、努力している様子があるか)
- 顔色や皮膚の色が変わった
- 急に強い痛みを訴えた
- 転倒して、頭を打った可能性がある
これらは、測り終えてから呼ぶものではありません。 呼びながら測る、あるいは人を呼んで手分けするほうが正しいです。
「まず応援を呼ぶ」は、どの手順書にも書いてあります。 一人で抱えないことが最初の一歩です。
呼んだあと、来るまでの時間にできること
医師が到着するまでに、情報を整えておくと次が早くなります。
- 直近のバイタルを並べる(変化が見えるように)
- 今日の指示と、最近変わった薬を確認する
- いつから変化したかを、他のスタッフにも聞く
- 必要になりそうな物を近くに置く
4番は現場の判断ですが、何が必要になるかが分かっているのは、その場にいる人です。
来てくれないときは
連絡したのに来ない、という状況は実際にあります。あなたが悪いわけではありません。
このときに大事なのは、遠慮して待たないことです。
- もう一度連絡する。 状況が変わったなら、変わったと伝える
- 緊急度を言葉にする。 「すぐ来ていただきたいです」とはっきり言う
- 他の医師や上位の当直に連絡する。院内の手順に従って
- リーダーや師長に共有する。一人で抱えない
「一度呼んだから」は、待ち続ける理由になりません。 状態が悪化しているなら、それは新しい情報です。
呼んで何もなかった日のこと
何もなくて、少し気まずい思いをした経験もあると思います。
その日のことは、気にしなくていいです。
医療安全の考え方では、何も起きなかった事例こそ、対策を打つ猶予があるとされています。呼んで確認して何もなかった、というのは失敗ではありません。
あなたが呼んだから何も起きなかった、という可能性もあります。 それは記録に残りませんが、確かにあることです。
報告をためらう空気については、こちらでも書きました。
それでも呼びにくい職場なら
ここまで書いてきたことは、まともに機能している職場を前提にしています。
呼ぶたびに嫌味を言われる、明らかに不機嫌な対応をされる、萎縮して呼べなくなっている。そういう状態は、あなたの問題ではありません。
呼びにくい空気は、そのまま患者さんの安全に跳ね返ります。医療安全の問題として扱うべき事柄です。
一人で改善できることではないので、リーダーや医療安全の担当者に相談してください。それでも変わらないなら、その職場が自分に合っているかを考える材料になります。
まとめ
- 迷ったら呼ぶ。 呼んで何もないコストと、呼ばずに手遅れになるコストは釣り合わない
- 当直医が本当に困るのは、呼ばれることではなく手遅れになってから呼ばれること
- 「うまく言えないけれど、いつもと違う」は立派な報告
- 伝える順番は、誰が→何が→バイタル→いつから→何を心配しているか
- 5番目がいちばん効く。 数値だけ読み上げられると、かえって時間がかかる
- 意識・呼吸・顔色・強い痛み・頭部打撲は、測り終える前に呼んでいい
- 来ないときは遠慮して待たない。 悪化は新しい情報
- 呼んで何もなかった日は、失敗ではない
- 呼びにくい空気は、あなたの問題ではなく職場の問題
呼ぶかどうかで迷った時間が、いちばんもったいない時間です。
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ご注意
この記事は一般的な情報提供であり、個別の臨床判断を示すものではありません。急変時の対応手順、医師への連絡基準、夜間のファーストコールの取り決めは医療機関ごとに定められています。実際の対応は、勤務先の手順書および指示に従ってください。判断に迷う場合は、その場でリーダーや上位者に相談してください。


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