※PR
プリセプターを任される時期は、たいてい2年目か3年目です。
自分だってまだ分からないことがある。それなのに、教える側になる。しかも「教え方」は習っていません。
この記事では、教え方の技術と、自分が潰れないための線引きの両方を書きます。
先にお伝えします。新人が辞めたとき、それはあなたのせいではありません。 ここは、あとで詳しく書きます。
いちばん多い失敗は、教えすぎです
まじめな人ほど、これをやります。
全部を先回りして説明し、失敗しないよう手を出し、聞かれる前に答える。親切なようで、育ちません。
理由は単純です。自分で考えた経験がないと、応用が効かないからです。
手順を教えられただけの人は、想定外の場面で止まります。「なぜそうするのか」を考えた人は、少しずれた状況でも判断できます。
だから、答えを言う前に一度聞く
質問されたとき、すぐ答えずに、こう返してみてください。
「どうしたらいいと思う?」
間違っていても構いません。考えた形跡があれば、そこを直せばいいだけです。
ただし、急いでいるとき、患者さんの安全に関わるときは、すぐ答えてください。 育成より安全が優先です。
できたことを、言葉にする
ここが、いちばん効く技術です。
新人は、自分が何をできるようになったのかが分かりません。 できないことばかりが目につくからです。
だから、外から言葉にしてあげてください。
「先週より、ルートの固定がきれいになったね」
「さっきの報告、結論から言えてた」
「頑張ってるね」では足りません。 何が良かったのかを具体的に言うと、再現できます。
そして、これは自分にも効きます。 相手の成長が見えると、教える負担が軽くなります。
指摘するときの形
直してほしいことは、必ず出てきます。伝え方に型があります。
- 行為を言う(人格ではなく)
- なぜ問題かを言う
- どうすればいいかを言う
例を挙げます。
「さっき、指示を確認せずに実施したよね(行為)。指示が変更されていることがあるから、実施前の確認が必要なんだ(理由)。次からは、実施の直前にもう一度カルテを見よう(方法)」
3番目が抜けると、ただの叱責になります。 「気をつけて」では、何を変えればいいか分かりません。
そして、人前で言わないでください。 内容が正しくても、人前での指摘は伝わりません。
この線引きは看護師が受けるハラスメントでも扱っています。指導は行為に向き、ハラスメントは人格に向きます。
記録を残してください
面倒に感じるかもしれませんが、これは自分を守ります。
残すのは、次のことです。
- いつ、何を教えたか
- 何ができるようになったか
- まだ1人ではできないこと
- 本人が困っていると言ったこと
2つの意味で効きます。
1つは、次に何を教えるかが決まること。もう1つは、問題が起きたときに「何をどこまで教えていたか」を示せることです。
新人がインシデントを起こしたとき、記録がなければ話が曖昧になります。あなたの教育が不足していたのか、想定外だったのか。記録だけがそれを分けます。
抱え込まないための線引き
ここからが本題です。
プリセプターがつらくなる理由は、たいてい教え方ではありません。1人で背負ってしまうことです。
あなたの責任ではないこと
- 新人が辞めること
- 新人のインシデント
- 部署全体の教育体制
- 新人と他のスタッフの関係
1番目を、はっきり書いておきます。
新人が辞める理由は、人手不足、教育体制、勤務の負担、他のスタッフとの関係、本人の適性。プリセプター1人で左右できるものではありません。
それでも自分を責める人が多いので、先に言葉にしておきます。あなたのせいではありません。
師長に上げるべきこと
次のことは、1人で抱えずに報告してください。
- 同じ指摘を3回しても変わらない
- 新人が明らかに体調を崩している
- 安全に関わる行動が繰り返される
- 自分の業務が回らなくなっている
最後の項目が、いちばん言い出しにくく、いちばん重要です。
プリセプターは、自分の受け持ちを持ちながら教えます。両方は物理的に無理なことがあります。 それは能力の問題ではなく、人員配置の問題です。
新人が明らかにしんどそうなとき
次のような様子があれば、教育の話より先に対応してください。
- 眠れていない、食べられていない様子がある
- 出勤前に表情が固い、涙ぐむ
- ミスが急に増えた
- 「向いていない」と繰り返し言う
これは根性の問題ではありません。 師長と、必要なら産業医につないでください。
詳しくは看護師のメンタル不調|見逃されやすいサインと新人看護師が「辞めたい」と思ったときで扱っています。
あなたが受け止めきる必要はありません。 つなぐことが仕事です。
教えると、自分の穴が見えます
最後に、良い面を書いておきます。
教えることは、自分の理解を確かめる作業です。
「なぜそうするんですか」と聞かれて、答えられないことが必ず出てきます。そこが、自分の理解の穴です。
手順として覚えていたことを、理由から説明し直す。この作業で、自分の看護が確実に整理されます。
プリセプターを経験した人が伸びるのは、面倒を見たからではなく、言葉にし直したからです。
そして、この経験は管理職や教育担当につながります。詳しくは主任・師長になるということで扱っています。
まとめ
いちばん多い失敗は、教えすぎです。答えを言う前に、一度「どうしたらいいと思う?」と聞いてください。
できたことを、具体的に言葉にしてください。「頑張ってるね」では再現できません。
指摘は、行為・理由・方法の3つで伝えてください。方法が抜けると、ただの叱責になります。
記録を残してください。次に教えることが決まり、問題が起きたとき自分を守ります。
そして、新人が辞めても、あなたのせいではありません。 自分の業務が回らないなら、それは人員配置の問題です。師長に上げてください。


コメント